
不登校の子どもに対して、周囲の大人はどのように寄り添えばよいのでしょうか。
発達障害や生活リズムの乱れ、人間関係の悩み──
子どもによって、不登校になる理由はさまざまです。
私は普段、フリースクールで子どもたちと関わっています。
一緒に過ごす中で、「この子は何に悩んでいるんだろう」「どんな言葉をかけたら安心できるんだろう」と考える場面も少なくありません。
もっと不登校について知りたい。
子どもたちへの関わり方を学びたい。
そんな思いから、旭川市大雪クリスタルホールで開かれた不登校児童生徒への理解を深める講演会「子どものこころと居場所 つながる世界とつながれる場所」に足を運びました。
会場には、不登校に悩む保護者や学校関係者の方など、多くの人が来場。
小さな子どもを連れた保護者も安心して参加できるよう、託児スペースも用意されていました。

旭川市では「26人に1人」が不登校
講演会の冒頭では、旭川市いじめ対策監からあいさつがあり、
市内では、26人に1人が不登校の状況にあることが紹介されました。
「26人に1人」という数字に、驚いた方も多いのではないでしょうか。
数字を聞いて、不登校は思っていた以上に私たちの身近な問題なのだと感じます。
旭川市では、学校や教育委員会、不登校支援ネットワーク「からふる」等の地域の不登校支援団体と連携し、
一人ひとりに寄り添った支援の充実に取り組んでいく考えが示されました。

教育・福祉・医療が連携「不登校支援ネットワークからふる」
続いて、不登校支援ネットワーク「からふる」から活動紹介がありました。
「からふる」は約2年前に設立され、教育・福祉・医療など、異なる分野の支援団体が連携し、
不登校の子どもや保護者へ必要な情報を届ける活動を行っています。
「からふる」では、年に3回ほど講演会やイベントを開催。
不登校を一つの立場だけで捉えるのではなく、
異なる立場から学び、支え合うことを大切にしていると説明されました。
最後に、「保護者・学校・行政・地域がつながり、不登校の子どもや家族が孤立しない地域づくりにつながる講演会になれば」との思いが語られました。

講師は北海道教育大学旭川校教授の片桐正敏さん
今回の講師は、公認心理師で北海道教育大学旭川校教授の片桐正敏さんです。
片桐さんは、発達障害や不登校、ギフテッドなど、
生きづらさや困難を抱える子どもたちについて研究を行っています。
「なぜ子どもは学校に行けなくなるのか」
「周囲の大人は、どのように寄り添えばよいのか」
不登校について考える中で生まれる疑問に、片桐さんはどのような答えを示すのでしょうか。

子どもの「生きにくさ」は、本人だけの問題ではない
「どうして学校に行けないのだろう」
不登校について考えたとき、子ども本人の性格や努力に目を向けてしまうこともあるかもしれません。
しかし、片桐さんは「子どもの生きにくさは本人だけで決まるものではなく、周囲の環境も大きく関係する」と説明しました。
では、子どもの悩みを大きくしてしまう「環境」とは、どのようなものなのでしょうか。
片桐さんは、子どもの生きにくさには、発達障害や思春期特有の心身の変化などの「個人要因」に加え、家庭環境や社会環境などの「環境要因」も関係すると説明。
特に、環境要因は「足し算」ではなく「かけ算」のように、個人の悩みを強くしてしまうという話が印象に残りました。
一つひとつを見ると小さな悩みに思えても、いくつもの要因が重なることで、子どもにとっては大きな負担になってしまうことがあります。
「その子を取り巻く環境に何が起きているのか」にも目を向ける必要があるのだと感じました。

学校が「本人の居場所」になっているか
「学校に行けないのは、学校が嫌だから?」
そう考えてしまう前に、子どもにとって学校がどんな場所になっているのかを考える必要があります。
片桐さんは、不登校をめぐって、子ども・保護者・教師の間で認識に大きな違いが生まれることを指摘しました。
特に教師には、子どもの中で起きている不安や困りごとが見えにくいことがあります。
例えば、学校では普通に過ごしているように見えても、本人は授業についていけなかったり、人間関係に悩んでいたり、学校にいることそのものに不安を感じているかもしれません。
だからこそ、子ども本人だけに目を向けるのではなく、教師の関わり方や授業の進め方など、「学校という環境」にも目を向けることが大切です。
子どもがその場所で安心できているか、大人が考えるべきなのは、そこなのかもしれません。

ネット・ゲームとは「上手に付き合う」
ネットやゲームとの関わり方も、講演の大きなテーマの一つでした。
「ゲームばかりしていて大丈夫?」
子どもがゲームに夢中になっていると、そう心配してしまうこともあるのではないでしょうか。
ネットやゲームは、今の子どもたちの生活から切り離すことが難しい存在です。
では、ゲームは子どもにとって「やめさせるもの」なのでしょうか。
片桐さんは、ネットやゲームそのものが悪いのではなく、問題になるのは「使い方」や「やり過ぎ」だと話しました。
また、不登校の子どもにとって、ゲームの世界が安心できる居場所になったり、人と交流するきっかけになったりすることもあります。
そう考えると、ゲームを一方的に取り上げるのではなく、「どう付き合っていくか」を親子で一緒に考えることが大切なのかもしれません。
ゲーム以外にも夢中になれることや、安心して過ごせる時間を少しずつ増やしていくことも、その一つです。

できていないことより、「できていること」を見る
子どもと接していると、つい「まだできていないこと」に目が向いてしまうことはないでしょうか。
「どうしてできないんだろう」ではなく、「今、できていることは何だろう」。
子どもの発達を支えるうえで、「できていないこと」ばかりを指摘するのではなく、「できていること」に目を向けることが重要だと説明されました。
また、子ども本人が自分の得意なことや苦手なことを理解し、それを周囲に伝えられる力を身につけることも、これから成長していくうえで大切なことです。
では、大人にできることは何でしょうか。
片桐さんは、支援者や保護者に求められるのは、子どもの気持ちを尊重しながら成長を支える「コーチ」のような関わり方だと話しました。
フリースクールで子どもたちと接するときにも、「何ができていないか」ではなく、「今、何ができているか」を見る視点は忘れずにいたいと思います。

無理に進ませず、少しずつ、できるところから
講演後の質疑応答では、学校現場で働く教員から、苦手な教員との関係が原因で学習に参加しづらくなっている子どもへの関わり方について質問がありました。
「学校に戻れるようにするには、どうすればいいのか」
片桐さんは、無理に状況を突破させようとするのではなく、「できるところから始めることが大切」と回答。
その子の状態やペースに合わせて、「今なら何ができるだろう」と方法を探していくことの重要さを感じました。

子どもに寄り添うために、大人も学び続ける
今回の講演を通して、不登校という言葉だけでは見えない、子ども一人ひとりの事情や苦しさに目を向けることの大切さを改めて学びました。
学校に行けるようにすることだけが、保護者や支援者のゴールではありません。
子どもが安心できる場所を見つけ、自分のペースで次の一歩を選べるようにすること。
そのためには、家庭、学校、行政、地域がつながることが必要です。
そして、子どもに関わる大人も、できていないことを探すのではなく、今できていることに気づくことが重要です。
不登校について知ることは、子どもを変えるためではなく、私たち大人の見方や関わり方を変えることにもつながるのだと思いました。
フリースクールで子どもたちと関わる私自身も、今回学んだことを日々の関わりに生かし、
一人ひとりのペースや気持ちを大切にしていきたいです。
これからも旭川でこうした学びの場があれば足を運び、子どもたちに寄り添うために、自分自身も学び続けていこうと思います。
講演会のアーカイブ配信
今回紹介した、不登校児童生徒への理解を深める講演会「子どものこころと居場所 つながる世界とつながれる場所」は、YouTubeでアーカイブ配信されています。
「もう少し詳しく話を聞いてみたい」という方は、ぜひ講演会の様子を動画でもご覧ください。
https://youtu.be/HVvMxz8eYs4?si=-z6JRnuJSUU9bqCR
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